僕の小中学生時代、将来の夢はプロレスラーになることでした(笑)。とにかく小学校の頃観ていたアニメは、タイガーマスクとあしたのジョー、大好きな映画はジャッキー・チェンに、少林寺、ブルース・リー。戦うことが大好きな小学生でしたから、金曜日の夜になるとテレビの前で、新日本プロレスを観て、土曜日の夕方になると全日本プロレスを観て、たまにテレ東でやってた国際プロレスに熱狂していたプロレス信者でした。
当然、小学校の休み時間は、教室、廊下、校庭、体育館、至る所でプロレスごっこ。
家に帰れば、友達の家に行き、友達の兄ちゃんが読んでるプロレス雑誌を皆で見ては、誰が誰より強い。いやいやそいつより、こっちの外人レスラーのが絶対に強いとか、毎日そんなことを繰り返してました。
そんな小学4年生のある日。
キーン コーン♪ カーン コーン♪
「よっしゃ〜、休み時間だ〜‼
お前ら昨日のタイトルマッチの続きやろうぜ〜‼」
「イイね〜。ギョウザ〜(僕の昔のあだ名)、今日は絶対ぇ負けねえかんな‼」
「おい、ちょっと待ってくれ、今日はお前らに見せたいもんがあんだよ‼」
そう言ったのは、学年イチプロレスが大好きで、プロレスの事なら何でも知ってるフクちゃんでした。
「何だよフクちゃん、休み時間終わっちゃうじゃねえかよ」
「まあ、待てよ。
俺なこないだから、家で作ってたもんが出来上がったんだよ。お前らに見せてやるよ‼」
フクちゃんが、そう言ってランドセルから出してきたもんに、一同言葉を失います。
「ジャーん‼」
「うぉぉぉぉぉ〜。
コレ、チャンピオンベルトじゃねえかよ‼」
フクちゃんがランドセルから取り出したのは、工作用紙と折り紙やアルミホイルを使って作った憧れのチャンピオンの証、チャンピオンベルトだったんです。
「やっぱ、フクちゃんスゲぇ〜。
俺もベルト作りてぇ〜な。フクちゃん作り方教えてくれよ〜」
「俺も‼」
「俺も‼」
「わかったよ、そしたら今日学校終わったら、俺んち集合な‼」
「よっしゃー‼」
こんな感じで、商店街の文房具屋で工作用紙や折り紙や必要なもんを買って、フクちゃんの家でチャンピオンベルト作りが始まったりしてました。
ホント、小学生の男子はアホですね〜(笑)
チャンピオンベルトが出来上がると、今度は覆面を作ろうって事になるんですが、母ちゃんのストッキングをもらって穴あけて、そこにマジックで模様を描いて……。
しかしそこは小4の男子、頭の中のイメージと、出来上がった実物は雲泥の差……。
被ってみたら、ドリフターズのコントのように、銀行強盗役の志村けんそのもの(笑)
皆で大笑いでした。
そしてお正月が過ぎた頃、それぞれがもらったお年玉を持って、フクちゃんが調べてくれた、プロレスファンも納得の覆面ショップへ
僕を含めて6人の小4男子が、チャリンコを何時間も漕いでフクちゃんの調べてくれた覆面ショップに無事辿り着いたのです。
予想に反して、結構値段の高い覆面。お金持ちの柿田くんはお年玉に物を言わせて一番高いタイガーマスク。貧乏だった僕が買えたのは、100の顔を持つ男と言われ、チャンピオンにもなった事のある、ミルマスカラス……ではなく、その弟、ドスカラスと言う、ちょっと地味な覆面でした。
それでも、6人がそれぞれお年玉で買った、覆面を被って自転車を漕いで無事にフクちゃんちまで帰宅。途中、何人もの人が振り向き、すれ違う車の人達は間違いなく二度見、信号待ちのお婆ちゃんからは、「あらまっ」ってびっくりされながらも、気分はすっかり覆面レスラーそのものです(笑)
そして、フクちゃんの家で僕らは誓いを立てました。
「いいか、もう俺たちはもうただの小学生じゃねえんだ」
「そうだよ、俺たちは覆面レスラーだもんな」
「そう、これから先は、何があっても誰にも、素顔を見られてはいけないんだぞ」
「おう、覆面を取っていいのは、風呂に入る時と寝るときだけだかんな‼」
「よし、わかった。そしたら明日の始業式からは、学校でも覆面レスラーとして生きてこう‼」
「おう‼」
とにかく今考えるとアホなんですが、当時は真面目に覆面レスラーになっているので、冬休みが空けた、翌日の登校日初日から覆面を被って登校することに‼
当然、朝イチの班登校の集合場所では、注目の的に。
上級生からは
「香取っ何やってんだ 覆面取れっ‼」
って言われたり、下級生からは
「あっ、マスカラスの弟だ‼」
「香取くん、なんでお面つけてんの?」
とか……。
それでも前日に仲間と交わした約束を守るため、小さな声で
「オレ メキシコ キタ ニホンゴワカラナイ」
とにかく皆大騒ぎでした……。
それでも、覆面の上に校帽をかぶり、ランドセルを背負って登校班の列に並び、下を向きつつ登校する当時4年生の香取少年(笑)
途中で他の仲間と通学路で一緒になると、6人全員が同じように覆面の上から校帽をかぶり登校してきた事に、やっぱり俺たちは覆面レスラーだなと、言葉を交わさずとも、目と目で通じ合ってました(笑)
そして、教室に入るなり、クラス中から6人が注目の的に。
「えっ何だよお前ら‼」
「ねぇねぇ、フクだよな、覆面取れよ」
「香取ぃ〜、マーボも何やってんだよ」
「いや、俺たちはメキシコから来た。
香取でもマーボでもない‼ 文句があるやつはかかってこい。いつ何時、誰の挑戦でも受ける‼」
クラス中が「……」です。
それでも、ココまで約束を守って来た6人の結束は更に強いものに。
「いいか、俺たちは覆面レスラーだ。昨日約束した通り、素顔も正体もバレてはいけないんだぞ。どんな事があっても貫くぞ‼ それが闘魂だぞ‼」
「オウっ‼」
キーン コーン♪ カーン コーン♪
〜ガラガラ〜
「よ〜し、皆おはよう〜
始めるから、席につけ〜‼」
「ハイ、じゃぁ〜日直‼
うん、ちょっと待て、香取、中里、田中、それから、岡村、山田、柿田、お前ら何、かぶってんだっ‼
その覆面はずせ‼」
「……」
「たっく、はずせって言ってんだろ‼」
「うわっちょっと、俺たちはメキシコから……うわっ素顔が…」
「ほら、お前も外せって‼」
「…先生、やめてください」
「香取、お前も外すんだよ、ほらっ」
「いや…ワタシハ メキシコ カラキタ ……」
「何をゴチャゴチャ言ってんだ‼」
いつ何時、誰の挑戦でも受ける……。
僕ら6人の覆面レスラーの夢は先生が現れてわずか数十秒で終わったのでした……。
その日、先生に没収された、お年玉を全部使って買った大切な覆面を返してもらえたのは、5年生になってからでした……(笑)
ちなみに、3学期最初の学級通信には、学校に関係ないものを持ち込ませないように。そして、覆面登校禁止と書かれていました。
あっ、フクちゃんだけは、腰に巻いていた手作りのチャンピオンベルトも一緒に没収されてましたが(笑)
「強くなてなるな‼ 弱いからこそ心震えるんだよ‼」
さぁ、バレンタインデーの今日、男性の皆さんはいくつチョコレートもらえましたか〜(笑)
学生の頃から、バレンタインデーなんてなきゃいいのにって心の底から思っていた、クラスの女子からは、影でジャイアンって呼ばれていた香取です(笑)
チョコレートなんていらない、俺は強くなるっ、なぁ〜んて強がってた頃が懐かしいですね。
今日はそんな強くなるってことなんですが、先日千ちゃんと大坂と、飲んでいたときに大坂が『俺がもっと強くならないといけないんですよね』なんて、言った時、すかさず千ちゃんが言った言葉が印象的でした。
「大坂ちゃん〜、
強くなんて、ならなくていいんだよ。
今のままでいいんだよ」
「えっ⁉ なんでですか?
俺が強くなんなきゃ、家族が……」
「ほらぁ〜、そこだよ。
無理して、強くなろぅってしてる〜。
違うよ。弱いままでもいいじゃない。
強くなって強いやつが戦って勝った所で、誰も心が動かないよ。だって強いし勝って当たり前だから。
でもね大坂ちゃん、弱いままの今の自分が、倒されても倒されても、ボロボロになっても、前に進もうってするその姿が、人の心を震わせられるんじゃないかな。僕はそう思うんだよね」
激しく共感できました。
自分も強くならないとって、無理して頑張って頑張って空回りしたり、自然体ではなくなって失敗したり、ホントはイザという時に、力まず力を抜くことが必要だったりするのに力をつけようとしたり……。
千ちゃんの言う通り、強い奴が勝つのもいいけど、弱いままでも諦めずに、何度も立ち上がって1ミリでも前に進もうとするその姿に人は心を動かされ、自分の心が震えるんだと思うです。
例えば、小学校の運動会。
徒競走で、スタートラインに並んだ瞬間、誰が見ても、走るのが苦手そうだったり、運動は上手くないだろうなって見た目でわかるような子がいたりする。
よーいどん‼
スタートしたら案の定のビリっけつ……。
全校生徒も見てるし、父兄も先生たちも皆が見てる中、一緒にスタートした友達からどんどん引き離され、自分では一生懸命に腕を振ってるんだけど、スピードは一向に上がらない。
今年こそ順位を一つでも上げたいって思ってたのに……。
自分の力の無さに、恥ずかしくて、情けなくて……。
それでも、一所懸命にゴールまで今出来る全力で走っているその子の姿を見た時、僕らは心を震わされるんじゃないですかね。
もう大人になった僕らには知恵がある。自分の苦手な事は、いろんな言い訳、それらしい理由をつけて、最初からやらない選択だってできる。でもそんな僕の目の前を、転んで膝擦りむいて、それでもゴール目指して、頑張ってるその子の姿に、今の自分を投影して、我武者羅に頑張る事を諦めて、なんかスマートにとかクールにとかやってた自分を見つめ直すんじゃないですか。
確かに、世の中どんなに努力したって、結果が付いてこないことだってあるし、自分の弱さを他人にさらけ出すなんて、格好悪いし……、でも今、目の前で涙をこらえながら、歯を食いしばって走ってる子供の姿は美しいし、格好良く見えるんじゃないですかね。
もっと自分を強くして、強くなってから勝負に挑むやり方もあると思います。でも、最初から勝負は見えてるかもしれないけど、今やらなきゃ、今行かなきゃいけないと動き出して、不器用でも弱くても、それでも前に進もうとするその姿は人の心を震わすんだと思います。
“本当のカッコ良さは、カッコ悪さの先にある”
強くなんかなろうとしなくてもいい、弱い自分を受け入れて、カッコ悪くても、前に前にできる事を必死にやれるそんな不器用だけど、頑張る自分になりたいたいです‼
「下町のバレーパーキング?‼」
これは僕が体験したご近所のスーパーマーケットのちょっとイカしたサービスのお話です。
そのスーパーは、地域密着でご近所の冷蔵庫的な、下町にあるスーパーオオゼキさんです。
ご存知の方も多いと思いますが、僕の住んでる下町には、ホントに助かる日常になくてはならないスーパーなんです。
いつも行くとびっくりなのが、店内の清潔さから始まり、レジのスタッフの応対が素晴らしいんですね‼
夕飯前のスーパーでは、店内もお客さまで溢れんばかり、当然レジには長蛇の列が何列にもなります。並んでるお客様も並びながら、レジの応対に目が行くわけですが、レジスタッフの笑顔から始まり、手際のいいレジさばきは、思わず見惚れてしまうほど。
当然中にはイライラしてそうな人もいますが、そんなお客様を見つけるなり、目配りしたり、時には「お待たせして申し訳ありません」と言いながらも、手は商品を次から次へと袋に詰めているんです。
一部のレジスタッフだけが、そんな感じなら驚かないのですが、全てのレジスタッフのそうなんです。みんな忙しい時ほどイキイキとしてるんですよね〜。
ホントにどう教育をしたらそうなるのか、僕は興味津々です。更に、夕方のピークを過ぎた頃に行った時には、自分のレジのお客様列が解消さらるやいなや、大きな声で『こちらのレジが空いています』と笑顔で手を上げながらインフォメーションしたり、レジの前に立って、会計のお客様を呼び込んだり、お待たせしないように、全員が全員アクションを起こすんです。
もし自分がレジ担当だとして、ビークの忙しさが一段落したら、自分のレジの列がなくなった瞬間、ちょっと休憩なんて思って、わざわざお客様を呼び込むなんて……。
そんな素敵なスーパーオオゼキさんですが、僕が一番びっくりしたのは、嫁のママチャリの前後に子供を乗せて、夕飯のお使いに行った時のことです。
下町のスーパーですから、まぁチャリンコ率は高い高い(笑) お店の前の駐輪スペーはもうチャリンコでぎゅうぎゅうです。『あら〜止めらるのかなぁ』と思ったその時でした。
「お客様、よかったらこちらへ」
見ると警備員の方です。
誘導された所に行くと、僕の心の声が聞こえたかのように
「こちらでお子さんを降ろして頂いていいですか?」
「あっはい。ありがとうございます」
僕が子供たちをママチャリから降ろすと。
「自転車はこちらでお預かりしますね‼」
と、言って僕の乗ってきたママチャリを動かし、ギュウギュウに詰まったチャリンコを左右に避けて、ママチャリを駐輪。鍵をかけて笑顔で戻って来るんです。
「お待たせしました〜‼」
鍵を渡してくれました。
更に、お使いを終えて、子供たちを連れてお店の前の駐輪所に行くと、僕らに気が付いたさっきの警備員が笑顔で近づいてきます。
「ありがとうございます。
自転車お持ちしますので、鍵を貸していただけますか?」
「あっ、はい‼」
「どちらの自転車でしょう?」
「あっ、その時自転車です」
「はい、それじゃあココで待っていてくださいね」
僕の乗ってきたママチャリを引いてきて、スタンドを立てて止めると。
「私が商品お持ちしますので、お子さんを先にどうぞ‼」
そう言って、買い物した袋を片手に、もう片方の腕でママチャリが倒れないように支えてくれました。
子供たちを乗せて、袋を受け取りお礼を言うと、笑顔で手を振りお見送り。
「ありがとうございました。
またね〜、バイバイ〜‼」
これに子供たちも嬉しそうに答えます。
こんな下町に、高級ホテルのような“バレーパーキング‼”……自転車の(笑)
町のスーパーマーケットです。
お客様の多くは子供を連れたママさん達です。買い物袋を片手に、子供を自転車に乗せるのも結構大変です。それを手伝ってくれる警備員スタッフ。
この日、チャリンコバレーパーキングをしていたのは、何人かいた警備員の方の一人でしたが、日が経つに連れ現在はほとんどの警備員スタッフがしてくれています。
きっと、あの警備員の方を見て、他の人達も真似するようになったのか、あの警備員の方が、みんなに教えてできるようになったのか。真実はわかりませんが、かゆいところに手が届く、ちょっとイカしたサービスでした。
一連の事を体験している、うちの子供達ですが、兄弟でオオゼキごっこしようって、言いながら、娘はレジ係の元気なお姉さん役、お兄ちゃんはバレーパーキングをする警備員役になって、遊んでました。
やっぱり子供達は大人の何気ない後ろ姿を観てるんですね〜‼