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2020年2月3日「大事なのは言葉の温度」

当時ヤンキーあがり16歳ではじめたアルバイトがディズニーランドでした。
当然、それまで勉強もでき訳ではないから、しゃべる言葉もヤンキー語(笑)
今振り返ると、ほんとにヤバかったんじゃないかって思いますよね……。(今も変わらないけどw)

それでも入社すると最初のオリエンテーション(導入教育)を受講した後には、配属先ごとに専門の研修を受けるんです。例えば、食堂部であれば食品衛生についてや、商品部であればお金の事についてなど、僕の配属はアトラクションの運営なので、言葉や話し方についての研修だったんです。

今考えると凄いんですが、元NHKでアナウンサーの人たちに話し方などを教えていた先生が教えてくれるたんですよね。その大野先生は16歳の僕からするとおじいちゃんで、研修と言っても今までのように、ディズニーではなんて楽しいものではなくて、淡々とサービス業として当たり前の事として、“尊敬語”や“謙譲語”、そして“敬語”などなど、一つひとつその意味などを説明してくれるんですが、これが学びなれていない当時の自分としては、何を言っているのかも分からないし、そもそも興味がないので睡魔との戦いと言うより気持ちよく白目をむいてました……ごめんなさい。

その後で、パークでゲストと接する時に使う言葉使いとして、代表的なケースなどでどんな言葉遣いをするのが好ましいのかなどをレクチャーしてくれて、問題を出してくれるんですが、そもそもの違いが判らない僕は全問不正解……( ;∀;)

すると自分の中に湧き上がってくるのは、他人のせいの逆切れ……。

『俺はミ●キーの中に入るんだから、そもそもしゃべんねぇし、言葉遣いなんて必要ねぇだろ』
(この時は自分がアトラクションなどの運営をする部署に配属された事も理解できていないんですね~。ほんとアホです)

そんな気持ちでふて腐れ、そっぽを向いてそこから先の問題にも答えずガン無視……。
自分がそんな空気を出すから、周りにも険悪な空気が……。
今考えるとほんとに自分勝手で、普通のセミナー講師ならやりにくいですよね~。今、自分がその立場になるとほんとに厄介を感じてしまいます。あっちなみにそんな人が受講している時には、きっと前世で俺が家族もろとも皆殺しにしてしまって今世で出会ったんだなって思って、心の中であの時はごめんなさいって手を合わせてます。

そんな中でも、百戦錬磨の太野先生ですから、最後に質問のある人? なんてやりました。
当然僕は質問すら思いつかないので、横を向いていたらその僕をわざわざ指してきたんです

「他には質問のある人はいませんか?」
「……」

「じゃあ、窓側の後ろに座っているあなた」
「……」
「え~と、香取さんかな、香取さんどうですか?」
「(えっ俺っ 絶対に指すなよオーラ見えねぇのか)……別にありません」
「う~ん、そうかな、ほんとは何か言いたい事とかあるんじゃないかなぁ」

そのクラスに居た全員が僕に注目します。

「……いや……ないっす……」
「そうかぁ、それではここで終わりにしましょう。皆さんお疲れ様でした
名簿の所にチェックして、自分の部署に戻ってくださいね」

参加したことをチェックしてもらう為に一番後ろに並びました。
そして、僕の番になった時でした。

「香取さん、最後に指してしまってごめんね。
ちょっと恥ずかしかったかな……」
「……いやぁ大丈夫っす」
「うん、ちょっと難しい内容だったし、聞いてるだけでつまらなかったよね」
「……いや……そんなことないっす」

「そうか、ありがとう。
僕はね、あんな風に話していたけど、実はややこしいから自分の言葉がいいと思っているんだよね」
「……」

「例えば、香取さんが敬語があんまりわからないとしよう。
それでもわからないなりに、何とかうまく正しい言葉を使ってゲストとコミュニケーションをとるでしょう。でもそれでは伝わらないこともあるし、正しい言葉を使おう使おうとするあまり、言葉の温度が冷たく感じるようになってしまう事があるんだよね」
「……言葉の、温度……?」

「普段香取さんが使わないような言葉を無理して正しいからと言って、使かったとしても冷たく感じてしまうんだよ。僕がやっていたTVのアナウンサーは正しい日本語で、誰が聞いてもおかしくない正しい言葉で視聴者の方にニュースをお届けしなければならない、敬語や謙譲語とか正しい日本語が必要なんですよ。でも、ここはもっと楽しい場所で、温かい場所でなければならないと思うんです。だからここで大切なのは正しい言葉遣いではなくて、その場にあった温かみのある言葉だと思うんです」
「温かい言葉ですか……」
「そうです。それが香取さんが発する言葉の温度だと思います。だから難しく考えるのではなく、香取さんなりの温かい言葉使いをしてください」

「……でも、さっき何時間もかけて、難しい言葉使いとかやっていたじゃないですか……」
「そうですね、私が今言っていることは矛盾していますね(笑)
でもですね、大切なことは一通り難しいかもしれませんが、そのシチュエーションに合わせた言葉遣いを一度でも習っていると言う事なんだと思うんですね。これはお金をいただいている以上、香取さんに取ってはつまらないかも知れませんが、習ったことがあると言う事実が、お客様に対しての保証のようなものだと私は理解しています。だから、一度正しい言葉遣いは習った上で温度が大切なんじゃないかなって思います」

「……はぁ……そうなんっすか……」
「はい、もちろんその場その場で適切な言葉使いをできるようにしていかなければなりません。でもそれを大切にするがあまり、香取さんの言葉が冷たく感じてしまうようなら、正しくないかもしれないですが、自分の言葉で伝えられたらいいですよね。その上で、正しい言葉遣いを勉強して、その場その場で使いわけが出来たらいいんじゃないかと思います。どうか温度を大切にしてくださいね」

先生は僕が難しいことが苦手で、最初から拒否していたことを見抜き、それなら今は温度を大切にしたらいいんだよって事を教えてくれたんだと思います。

だからこそ、その後も言葉使いはめちゃくちゃだったけど、ゲストからなんだその言葉使いはって叱られた事は一度もありませんでしたし、今でも自分らしく居られるのは、その温度の事を教わったからだと思います。

先生、天国から観てますか?
今も正しい言葉使いとはほど遠くて、先生もあきれていると思いますが、それでも毎日、相手に伝える言葉の温度はいつも温かったのかって気にしてますよ。
お陰で、他人と比べて正しいかとかせずに、堂々とありのままに自分らしく生きることができています。ありがとうございます。でも、若い人たちに勘違いされないように、正しい言葉使いも勉強しますね(^^♪

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