2020年 1月4日「ディズニーらしいの“らしい”を明確にさせる」

昨日書くはずが、飲みすぎて寝落ちしてしまいました……。すみません。
って事で、一昨日は伝説の“お子様ランチ”のサービスから、サービスおもてなしの本質について、僕なりの考察をしてみました。
サービス(おもてなし)にも種類があり、当たり前の事を当たり前に徹底的に行う“機能的サービス”と、相手の心に寄り添い、心の声に耳を傾けて行う“情緒的サービス”があります。
今回紹介したお子様ランチのサービスは、この情緒的サービスの方になりますが、相手の心の声を聞いて(想像して)行うので、サービスを提供する側のセンスや感性が試さるわけです。そしてまた、これから行おうとするサービスがディズニーランドで言うディズニーらしさからかけ離れてなく、ディズニーらしいサービスなのかって事が重要になっていきます。
この“○○らしい”って部分が一番難しいのですが、どうやってこのらしさを伝え、理解してもらえるのかなんですが、そのひとつの方法が、今までに実際に行ってきた伝説のサービスの事例をたくさん伝えることなんじゃないかと思います。
先輩たちから朝礼や終礼などで、キャストがいい話をたくさん聞くんですよね。僕もたくさん聞きました。そうすると、自分の中に感動するサービスや、ディズニーっぽいサービスの引き出しができるんです。
何がディズニーっぽくて何がそうではないか、ここに投げたらOKだよっていうディズニーのストライクゾーンを言葉で表すのは難しかったりもしますが、日々「昨日こんなことがあったんだよ」っていうエピソードを伝えることで、キャストたちにディズニーのストライクゾーンがだんだん見えてきて、自分たちの引き出しが増えていき、実際にそういう場面にあったときに、どれを使おうかっていう状態になっていきます。
更に大事なのは、それを先輩キャストやリーダーが話すって事なんですが、僕の先輩たちはそのエピソードの最後に、自分なりの正直な感想のようなものを話してくれる事で、共感が増すんじゃないかなって思うんです。
例えば、前回紹介したお子様ランチのエピソードを伝えた後、
「……そして彼女が行ったこのお子様ランチのサービスを受けて、ゲストは本当に喜んでくれたそうです。
どうですかね?
僕は、正直この話を聞いた時、自分が彼女の立場だったら、ここまでできたのかなぁって思いました。きっとお子様ランチが食べたいのかな?ぐらいは思ったかもしれないけど、あのお店が盛り上がっている最中に、いったん手を止めて、もう一度お客様の所に行けたのかって考えたら……。きっと僕なら行けなかったんじゃないかなって思うよね。
更に僕が感動したのはね、彼女がお子様ランチを出した時に、さりげなく子供用の椅子を差し替えてあげるなんて発想が凄いと思ったし、最後に静かに『この後も3人でごゆっくりお楽しみください』と言ってその場を3人だけにしてあげるやさしさが、ほんとに凄いなぁって思ったんだよね。
今日も皆さんの前に居るゲストの中には、口には出さないけど色々な事があってここに来てくれた人たちです。ぜひ、多くのゲストの心の声に寄り添って行けたら最幸だよね。
それじゃあ今日もよろしくお願いしま~す‼」
って感じで話してくれるんですよね。だからこそ、自分もそうだったなとか、先輩の気づきから『あっ俺もそこまでは考えてなかったな』とかの共感ができたんじゃないかって思います。
だから、ボクはこれがディズニーの文化を作っているんだと思うんですよね。
本当にあった出来事をベースに、生きたストーリーを言葉としてリーダーが伝えていき、それを自分や周りにいる仲間が共通して持つことで、だんだんとそういう雰囲気や文化になっていうんだと思うんです。
そんな風にしてディズニーでは感動を呼ぶサービス、マニュアルを超えたサービスというのが生まれてきました。
お誕生日シールなんかもそうだって聞きました。実は1人のキャストが始めたことだったんですね。
ゲストと会話する中で、お子さんが誕生日っていうことがわかった。
それで「おめでとう!」って言いながら、そのキャストはどうにかしてその子をビックリさせたいと思ったわけです。それで「そうだ!」って。
「次は何に乗るの?」
「スプラッシュマウンテン!」
「そっかあ、じゃあ楽しんでいってね。バイバ~イ!」
って話を聞いて、見送った後にスプラッシュマウンテンに内線電話。
「これから○○さんっていう4人連れの家族がそっちに行くんだけどさ、緑の帽子と青いTシャツ、半ズボンの○○ちゃんって子が、今日誕生日なんだって。来たらさ、おめでとうって言ってみて。すげ~ビックリするから。じゃあね」
って。
それ受けたキャストは、その家族が来るのを待っていて
「○○ちゃんでしょう? お誕生日おめでとう!」
「え~‼ なんで知っんの?」
「へへへ~、ミッキーに聞いたんだよ」
「わお。ありがとう」
そんな風になるわけです。
ビックリした顔を見て面白かったんでしょうね、それでまた驚かせてあげようと思って、次はどこに行くか聞いていく。そんなことをみんながやり始めま、それは面白いし、喜んでもらえるってことが分かってきて、だったらキャストにわかる誕生日シールを作ろうよ、っていうことになったんだそうです。
それがディズニーキャラクタ-のシールだったんでしょうが、お客様にはそのシールの意味がわかりませんから
、ゲストと話をして誕生日だということがわかったら、シールを貼ってあげて、シールを貼っているゲストを見たら、「おめでとう!」「今日は誕生日? ちょっと待ってて」とキャストを集めてハッピーバースデーを歌ってあげたりしたんだそうです。
なんかアメリカ人っぽいですよね~。
今でこそ日本でも、当たり前にできるようになりましたが、最初は手順にはなかったんです。
なぜそういうサービスが生まれるかというと、さっき言ったような、ゲストが本当に喜んでくれた事例、感動してくれた事例、パークの中で起きてる、そんなドラマを、毎日リーダーが語ってくれたんですよね。
ディズニーランドには素晴らしいマニュアルがあるんじゃないかと聞かれますが、一般のスタッフはマニュアルなんて見る機会はなかったです。マニュアルはどう教えるかの手順を“確認”するためにトレーナーが見るものだと習いました。
教わる側が見るものではなく、教える側が見てたんです。
教える側がマニュアルを覚えて、実践してやって見せるを徹底するのがディズニーランドでした。
自分がトレーナーになった時にマニュアルを見ましたが、何のことはなかったんですよ。
取扱説明書です。SOP(Standard Operating Procedure)といって日本語で言うと標準作業手順書です。ボートを発車するときは何を確認して、どのランプを見て、どのボタンを押すか、そんなことしか書いてありません。
それをいかにして伝えていくかがトレーナーの役割なんです。
このときに「これが大事なんだよ、なぜかわかる? なぜだと思う?」と問いかけながら教えていくわけです。
これって自分で考えないと忘れちゃうんですよ。だからディズニーランドでは、必ず本人に考えさせて答えを出させます。セリフ一つであっても
「ディズニーではこう決まってるからこう言え」ってことはなかったです。
なぜそうしているか、何のためにするか、それを一緒になって考えてくれる。
答えを言ってるようなもんだったりもしますけど、必ず答えは自分の言葉で出させてました。だから頭に残るし、身体に染みついていくんですね。
ちょっと話がそれてしまいましたが、○○らしさのストライクゾーンをはっきりとさせるには、毎日リーダーが今までにあったサービスのエピソードを自ら語りついで行くことです。
リーダーシップを研究しているべティン先生が言っていました。
リーダーシップで一番大切なものはパッション(情熱)なんだと。
熱だけは、人から人でないと伝えたれない。紙や文字ではダメなんだと。
だからリーダーである私たちが、情熱を燃やして伝えていくことで、必ずその熱はチームみんなに伝わるんだよと。
明日からも情熱を持って行きましょう‼