「スベらない話 サービスリカバリーポップコーン」

皆さん、ファーストフード店やフードコートなんかで、子供達が注文した食事を運んでる時に、『危ないから気をつけて運ぶんだよ』って言ってる側から、ドバァッてこぼされたりした経験はありませんか?
今日はそんなお話です。
僕の所には、長男の虎之介、長女ひかり、次男の銀次郎の3兄弟です。まだ虎之介が小学校の低学年ぐらいで、ひかりが幼稚園、銀次郎が赤ちゃんだった頃に、家族皆でディズニーランドに遊びに行きました。
色んなアトラクションに乗ったり、ショーを観たり、とにかく思っきり楽しんでました。
ちょうどファストパスのアトラクションの開始時間が過ぎていたので、近道をしようとウエスタンランドの所を歩いてる時でした。
「ひかりね、ポップコーンが食べたいの……」
「もうすぐご飯だし、今食べたらご飯食べられなくなっちゃうよ‼」
「…大丈夫、食べるもん。ねっ、ポップコーン買って〜」
始まっちまいました……。
なるべく子供たちの目に入らないように入らないようにと、ポップコーンワゴンのないとこを通っていたつもりだったんですが……。
もう、こうなると止まりません。当然お兄ちゃんも始まります。
「僕もポップコーン食べたい‼」
「ポップコーン、ポップコーン、ポップコーン‼」
……もう、どうにもならないので、仕方なくポップコーンを買え与えることになるのですが、ここからが大変です。僕が働いていた頃はポップコーンと言ったら“塩”しかなかったのですが、今はキャラメルだの、カレーだの、ハチミツだの、クリームソーダーって、誰か食うんだよ(笑)
今度は味で兄弟がもめだします……。
「ひかりはキャラメルがいい\(^o^)/」
「えっ、キャラメルヤダー。ハチミツのやつがいい〜」
調べると、一番近いのは塩味、他のはこれから向かうアトラクションとは真逆の位置に……。しかし、ココで妥協してしまったら、子供たちの歩くスピードでは、ファストパスの終了時間に間に合わない……。
もう、ここは強引に行くしかありません。
「父ちゃんは塩、他のはもう終わっちゃったみたいだよ」
「えぇ〜なんでぇ?」
「品切れなんじゃねえか‼ なっ、だから今日は塩で我慢しろよ〜。そんなに味も変わんねぇからよ」
「えぇ〜ヤダー‼」
「もう、うるせっ、塩って言ったら塩なんだよ」
最後は強引に味を決めて一番近いポップコーンワゴンへ。しかしここでも一難去ってま一難……。並んでる途中で見つけちゃうんですね〜バケツ……。
「ひかり、あのおっきいやつがいいの‼」
「はっ‼ あんな大きいの食べきらないし、だめだよ」
「えぇ〜兄ぃにと、一緒なら食べれるよ。ねっ兄ぃに?!」
こういう時に限って兄妹って結託するですよね〜(笑)どんなに、紙の小さい方だったら2個買ってあげるって言っても無駄でした……。嫁に助けを求めますが、俺が許したんだからねと言わんばかり……。
それにしても、あのポップコーンバケツって、なんであんなに高いんでしょ(笑)
仕方なく、ひかりの選んだポップコーンバケツに塩味のポップコーンがなみなみとつがれ、お姉さんがひかりの首にかけてくれました。
なんだかんだありましたが、娘の嬉しそうな姿を見ると、親バカな自分も幸せなんですね〜。
さぁ、次のアトラクションへ急ごうと言うことで、歩き出しました。
しばらく歩いていると、ベビーカーを押す俺の後ろで何やらお兄ちゃんと妹でモメ始める声が……。
「なんでひかりばっか持ってんだよっ‼
貸せよ‼」
「イヤだっ‼ ひかりがお姉さんからかけてもらったんだからねっ」
見ると、ひかりの首にかかってるバケツを、お兄ちゃんの虎之介が引っ張っています。嫁さんもやめなさいって声をかけますが止まりません……。
「おい、コラっ、ヤメろっ‼ そんなに引っ張ったら外れちま……あっ」
お兄ちゃんがバケツを無理矢理に引っ張り、ひかりもお兄ちゃんに取られまいと身体をひねったその時でした。
バケツのヒモが外れ、バケツが一瞬、宙に浮いたのです。
そん時の俺にはスローモーションで、宙に浮いたそのバケツから、今さっき買ったばかりのポップコーンが大量に飛び出し、バケツと中身のポップコーンが地面にバラまかれてしまいました……。
……ち〜ん。終わった(心の声)
「だから言ったじゃねえか‼
なんでお前は引っ張んだよっ
こんアホっがっ‼」
「……(全員)」
完全にブチギレる俺。
俺が子供にブチ切れた事に呆れ、ぶちまけられたポップコーンを集めて捨てようとする嫁さん。
怒られてしまうと言う恐怖と、せっかく買ったのに食べられなくなる悲しさで、涙目の子供達。
これまでの楽しかったはずのディズニーランドが、悪夢に変わろうとしたその時でした。
白い服の妖精が、ホウキ(トイブルーム)とチリトリ(ダストパン)で、ぶちまけられたポップコーンを、華麗な早業で、拾い集めます。
シャカシャカシャカ
あまりの早ワザに家族皆が、そのカストーディアルのお兄さんに釘付けです。向こうも、注目されているのがわかるんでしょうね。色々な技を披露してくれます。
掃いたポップコーンで、自分の股下を通したり、最後には、ホウキでポップコーンを上からポンッと突っつくと、ポップコーン宙に舞い、舞ったポップコーンをチリトリですくって終了‼
「おぉ〜‼」
気がつくと家族全員が拍手?
さっきまで父ちゃんブチ切れで最悪だった雰囲気はどこへやら。
カストーディアルのキャストも軽く頭を下げてひかりの前にひざまずき何か話しています。
「お嬢ちゃん、ポップコーン少なくなっちゃったね」
「……うん」
「大丈夫だよ、お兄さんが新しいポップコーンを足してあげるからね」
「えっほんと、ヤッター(^^)」
「じゃあ、魔法のカードに書くから、お名前教えてくれる?」
「うん、ひかり‼」
「ひかりちゃんだね。ポップコーンのお味は…」
「キャラメル〜‼」
(一同……はっ?!)
一瞬の間があって、お兄さんが何か書いていたのをやめて、もう一回聞いてきます。
「そっか……キャラメル味……だったのかな?」
「うん、キャラメル味〜(^^)」
「…よし、わかった。キャラメル味のポップコーンを足してきてあげるから、ちょっと待っててね」
どう考えても味はキャラメルではありません。バケツに残ってるポップコーンも、今キャストがお掃除してくれた、ぶちまけられたポップコーンも、見ればわかります。キャラメルのかけらもなく、真っ白……。
それはキャストのお兄さんにもわかってるはずですが、幼いひかりの満面の笑みと、期待に満ちた眼差しで、キャラメルって……お兄さんもこれには負けたのか、俺のところに来て、キャラメル味はちょっとだけ離れた所にあるから、少しお待ちいただけますか?と……。顔から火が出るとはこの事です。俺も嫁も顔を真っ赤にして、ただうなずき頭を下げるしかありません。
しばらくして、お兄さんがポップコーンバケツを持って現れます。
「ひかりちゃん、お待たせ〜。できたてだから美味しいよ、ハイ‼」
「ありがとう\(^o^)/」
俺も嫁もカストーディアルのお兄さんに、深々と頭を下げお礼を言いました。
まさかの素晴らしい神対応です。
「それじゃあ、ひかりちゃんこの後もいっぱい楽しんでね〜バイバイ〜」
「お兄さんありがとう〜バイバイ〜」
お兄さんが去って、歩きながら聞いてみました?
「ねぇ、ひかり、なんでキャラメルって言ったの? こぼしたやつは塩味だったでしょ?」
「だって、ひかりキャラメル味が好きだから」
「いやいや、そうじゃなくてさ……」
するとお兄ちゃんが思いついたように
「あっ僕、いいこと思いついた‼
ひかり、ポップコーンを全部、食べ終わる前に、もう一回お掃除の人の前でこぼしたらいいんだよ‼
そしたらまた満タンにしてもらえるじゃん。だから今度はハチミツ味って言うんだぞ‼」
「うん、わかった。ハチミツね‼
兄ぃに、キャラメル味美味しいね〜」
アホかっ、もうヤメローーーーーー‼
たまたま買ったバケツは、半透明で中身が透けて見えてます。
ひかりの首からは、下半分が真っ白のポップコーン、上半分がちょっと茶色のポップコーン。見事にハーフ&ハーフのポップコーンバケツになりました(笑)